危機管理システム研究学会 設立趣意書

 

1.なぜ新しい学会なのか

 

阪神・淡路大震災、地下鉄サリン事件、ペルー日本大使公邸人質事件、金融機関の破綻事件などをきっかけに、わが国のあらゆる分野でリスクマネジメント、危機管理体制の総点検と見直しが叫ばれてきました。

 

一方21世紀を迎え、インターネットの普及や高度情報化社会の進展とともに、ネットワークシステムのダウンによる事業活動の中断、あるいは不正アクセスによる機密情報の漏洩やデータ破壊等のハイテク犯罪など、予期せぬ新たなリスクや危機が次々と出現することも予想され、一部は既に現実のものとなっています。

 

しかし現状ではこれらのリスクや危機に対して、われわれの社会は必ずしも有効な対応手段を持っているわけではありません。むしろ、様々なリスク・危機から生ずる被害に対してある程度の対策がとれたとしても、次々と出現する新たなリスクや危機に対しては、無抵抗でただ過ぎ去るのを待つという消極的姿勢が多く見られる現状にあります。

 

来たるべき21世紀において、我々が対応せざるを得ないリスクに対して、少しでも前向きな対応ができるようにするためには、個人、企業、社会のあらゆるレベルにおいてリスク感性を研き、リスクに対するノウハウを社会の財産として蓄積していく必要があります。

 

そこでわが国においては、個別リスクの対処に関する研究をはじめとして、社会的影響などを考慮した多角的かつ学際的研究及び、高等教育機関にとどまらない社会的啓発、社会的教育も含めたリスク感性教育への真剣なる取り組みが喫緊の課題となってきていると言えます。

 

 

2.当研究学会の目指すもの

 

当研究学会は、リスクから発生する被害・損失を最小化し、リスクに強い社会的基盤すなわちリスク対応組込型社会システムをつくり上げて安心と幸せにつながる社会を目指してまいります。

当研究学会では新しく出現するリスク・危機の研究および対処策はもとより、その教育システム、管理システム、実地訓練システムを充実させるための研究・教育を行うことが重要であると考えており、ここに当学会活動の特色の一面があります。

当研究学会では、高度情報化社会・ネットワーク社会に対応すべく、インターネットを活用し、リアルタイム・双方向のコミュニケーションを図ってまいります。    

 

 

3.当研究学会の活動内容

 

当研究学会では、次の4本柱で地に足をつけた事業活動を行います。

 

(1)危機管理の教育基盤の整備充実

企業・公的機関・個人のレベルで危機管理を自らの力で実践できるよう、高等教育機関(大学院、大学、専門学校など)の教育インフラを整備充実していきます。

  • 高等教育機関のリスクマネジメント・危機管理教育実践のための訓練プログラムの研究開発を行います。
  • 全国拠点校のネットワークを構築し、リスクマネジメント・危機管理に関する高等教育機関の教育訓練プログラムを実施します。

(2)リスクマネジメント・危機管理および危機管理システムに関する調査研究

毎年度1回大会を開催し研究成果の発表および討論を行います。 分科会活動を中心に研究会を開催します。

 

(3)事例研究と社会に向けた情報発信

  • 社会におけるリスクマネジメント・危機管理の実施状況のモニタリング活動を行います。
  • 今日的課題としてのリスクに対するモニタリング活動および実際の事例研究の発表を通じて社会的啓発に結びつく情報発信を行います。

 

(4)他学会との連携

国内外の関連学会およびその他の団体との連携・連絡を図り、相互に啓発発展に努めます。  

 

 

4.当研究学会への参加は立場、職種を問いません

 

当研究学会では下記の方々はもとより、各方面幅広い方々のご参加を期待しております。

 

  • 製造・流通・サービス・金融・保険をはじめあらゆる業種やあらゆる分野の企業・団体等の理事・取締役・監査役、および総務、財務、法務、人事、生産管理、情報システム、内部監査等各方面における実務家
  • 公共機関・自治体等の管理者および実務担当者
  • リスクマネジメント・危機管理に関心のある教育・研究者
  • リスクマネジメント・危機管理に関心のある学生、院生
  • 弁護士、公認会計士、税理士、監査人、弁理士、技術士、社会保険労務士、医師等の専門家
  • 安全管理、リスクマネジメント、危機管理、リスクコミュニケーションの専門家  

 

 

5.危機管理システム研究学会設立にむけて

 

 リスクマネジメントシステム及び危機管理システムの標準化が、グローバルスタンダードとして世界的に進められようとしております。グローバルスタンダードは、リスクマネジメントシステムや危機管理システムの「仏(ほとけ)」というハードをビジネスに導入することであり、この危機管理システム研究学会では、「魂(たましい)」というソフトを広く社会に提供するものであります。すなわちここでいう「魂(たましい)」とは、リスクマネジメント・危機管理に対する意識改革、教育活動であります。

 

 広く多くの人との尊敬と友情とひとり一人の存在感を基本とした情報交換、研究成果の共有、教育活動の推進等を通じてその成果を社会に還元する学会として、危機管理システム研究学会を設立するものであります。

 

2000年4月22日

 

 


危機管理システム研究学会設立時の組織体制

(2000年4月時の所属・役職、故人を含みます)

 

会 長

徳谷 昌勇 (成蹊大学教授)

 

副会長

樋口 修一郎 (東京ガスハウジング社長)

山本 正隆 (沖デ-タ相談役)

 

理 事(あいうえお順)

 池内 正英 (安全工学株式会社・情報セキュリティ事業部長)

上野 治男 (松下電器産業株式会社・取締役)

菊池 敏夫 (日本大学名誉教授)

後藤 和廣 (三井海上基礎研究所リサ-チャ-)

小林  誠 (住友海上リスク総合研究所・調査第一部長)

指田 朝久 (東京海上リスクコンサルティング主席研究員)

島田 公一 (大東京火災海上・商品開発部次長)

鈴木 敏正 (日本総合研究所理事)

高木 新太郎 (成蹊大学教授)

辻  純一郎 (エ-ザイ法務部課長)

中川 又四郎 (社会環境センタ-理事長)

廣井 脩  (東京大学教授)

松田 修一 (早稲田大学教授)

村上 處直 (防災都市計画研究所名誉所長)

渡辺 健一 (成蹊大学教授)

 

監 事

小島 義輝 (東京情報大学教授・公認会計士)

齋藤  淳 (公認会計士・税理士)